ヨハン・ペラトーネル 特集 1

大都市の息吹をそのまま伝えたい

わすか6歳にして周囲に絵の才能を認められ、14歳のときにはすでにプロのイラストレーターとして活動をはじめていたヨハン・ペラトーネル画伯。 「ポップアート」というジャンルに彗星のように登場した若き天才です。

彼が追及するテーマは常に"大都市”。「街は生きている」という彼自身の言葉がいみじくも示すように、天に向かって林立する近代的な建物、人や乗り物が絶え間なく生み出す喧噪、きらびやかな光の洪水など、大都市だけが生み出す複雑で有機的なエネルギーをリアルなビジュアルに変えて表現していくことがヨハン・ペラトーネル作品の真骨頂です。

彼の作品を特徴づけているのはいくつものレイヤー(層)を用いた技法です。これにより対象物に立体感が加わり、各所にちりばめられたラインストーンやスパンコール、ラメなどの輝きが都市の色彩をさらに際立たせ、見るひとの心をワクワク感で満たしています。

完成までに数百時間、時には1000時間をも費やすほどの情熱が注ぎ込まれた数々の作品はいずれも街の表情を細部まで的確にとらえ、その町の熱気や騒音までが伝わってくるようです。

フィレンツェ・セーラ
フィ レンツェ・セーラ

わずか14歳で見出された若き才能

ヨハン・ペラトーネル画伯は1986年にパリに生まれました。父は世界的に活躍する作曲家という家庭環境に育ち、幼児期からアートに親しみながら育ちました。

アーティストとしてのキャリアをスタートしたのは6歳のときで、この時すでに現在の作品の原型とも言える街の風景を盛んに描いていたそうです。「今とは比べ物にならないくらい稚拙なものですが、私が始めて描いたスケッチも街をテーマにしたものでした」とヨハン・ペラトーネル画伯。そして14歳のとき、彼の作品がある出版社の目にとまります。

その人物はフランスの有名なポストカード会社であるカルトダール(Cart d'art)社の編集者で、「もし私とやってみたいと思うなら、こういうものをこういう感じで描いてみないか・・・?」とアドバイスされ、それが契機となり、ヨハン・ペラトーネル画伯はプロへの道を歩みだしたのでした。その後さらに個人教授に指示して様々な表現技法や素材の扱い方を磨き、20歳を迎えるころ、本格的にプロとしてのスタートをきりました。

自由の女神
自由の女神

そしてさらに数年後、彼に大きな飛躍となるチャンスが訪れました。パリのあるホテルに展示した作品がギャラリー関係者の目にとまり、それがメジャーデビューへのきっかけとなったのです。フランスに限らず、新人画家がいきなりギャラリーと契約することはまずなく、多くの成功したアーティスト達も最初はこうしてホテルやレストランの壁面に作品を飾ってもらうところから発掘されキャリアをスタートしています。彼もまたそうしたチャンスを確実に自分の味方につけることのできた、選ばれたアーティストの一人と言ってもよいでしょう。

現在では海外のアートフェアにも招聘され、世界各国に多くの顧客を獲得するまでとなったヨハン・ペラトーネル画伯。フランスを代表する歌手で「アイドルを探せ」などのヒット曲で日本にもファンの多いシルヴィーヴァルタン夫妻も、ヨハン・ペラトーネル作品の大の愛好家として知られています。

バルセロナ・スカイ
バルセロナ・スカイ

1枚に500時間以上もの制作時間

作品を特徴付ける、いくつもの層によって立体感を持たせた3D技法は、どのように生み出されたのでしょう。
「幼い頃から自分を魅了してやまない大都市の立体感と色彩にあふれたエネルギーを、いかに細部に至るまで緻密に表現するかを考えた末に、この方法に至ったのです」
というヨハン・ペラトーネル画伯。一つの建物を描くにも、空間における対象物の存在感を表現するためレイヤーを重ね、さらにその上にラインストーンやスパンコールなどを散りばめてきらびやかな輝きを与え、リアルさとファンタスティックさが入り混じった独特の世界を作り上げています。

それは気が遠くなるほどの根気と忍耐そして情熱を要する作業でもあります。平均500時間、大きさや複雑さによっては1000時間以上をかけて、インスピレーションの全てが一つ一つの作品に注ぎ込まれています。

モスクワ・イン・レッド
モスクワ・イン・レッド

これまでにヨハン・ペラトーネル画伯がテーマとしてきた大都市は、パリ、ニューヨーク、ロンドン、ベイルート、ドバイ、シンガポールなど、欧米から中東、アジアへと広がっています。また同じ都市を昼と夜の異なる視点から描き分けているのも彼の大きな特色です。

例えば自分自身も大好きだと言うニューヨークは、太陽の降り注ぐ公園や、通りの賑やかな活気が鮮やかな色彩となった『ニューヨーク・デイタイム』と、光に満ちた街路と摩天楼が輝く『ニューヨーク・アット・ナイト』という2作品によって、異なる個性をもった街として見事に表現されています。様々な都市が持つ多様な個性が、こうして観る人の心に余すことなく伝わってくるのです。

「世界には、これからまだまだ描いてみたい都市がたくさんあります。」というヨハン・ペラトーネル画伯

そう、彼の物語はまだ始まったばかりなのです。

ヨハン・ペラトーネル画伯の作品制作風景